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組紐・組物学会事務局

京都工芸繊維大学大学院 
先端ファイブロ科学専攻
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〒606-8585
京都市左京区松ヶ崎御所海道町
Tel/Fax: (075)724-7905 
E-mail: inoda@kit.ac.jp
http://www.kumihimo-society.org
ご入会、ワークショップ、組紐検定のお申し込みはこちらにお願いします。

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組紐国際会議 2019 伊賀 

本学会にとって初めての国際イベントとなった第4回組紐国際会議(以下Braids 2019)は、2019年10月13日から18日に伊賀市で開催され、無事終了しました。ご参加頂いた80名の会員各位のご協力に感謝致します。海外13カ国からの参加者は85名(別に同伴者が30名)でその内訳はアメリカ(42)、イギリス(19)、カナダ(5)、フランス(3)、オーストラリア(3)、デンマーク(3)、イタリア(3)、オランダ(2)、スエーデン、イスラエル、インド、ベルギー、南アフリカが各1名でした。台風19号の影響で関西・中部国際空港到着便の多くがキャンセルとなり、自分のワークショップの時間に間に合わない為に参加をキャンセルした先生が3名、一般参加登録者が5名、遅れて到着した先生が3名いました。このため会期前半では、先生不在となったクラスを急遽代理の先生が努めたり、遅れて到着した先生のクラスは夜間に補講を行うなどして、3日目には本来のスケジュールに戻ることができました。参加案内の小冊子はこちらをご覧下さい。

■会場  ハイトピア(ワークショップ・講演)、崇廣堂(作品展示・パーティ)

写真1. 基調講演(ハイトピア) 写真2. 作品展示会(崇廣堂)

■日程 会期:2019年10月13日〜18日

イベント 場所  
13(日) 受付 (13:00-18:00) ハイトピア1F  
作品展準備(13:00-17:00) 崇廣堂(準備のみ)
歓迎ワインパーティ(18:00-20:00)
14(月) 基調講演、ワークショップ、バザー(17:15-19:15) ハイトピア3, 4, 5F 受付:ハイトピア1F
作品展(9:00-21:00) 崇廣堂
15(火) 基調講演、ワークショップ、特別講演(聴講自由) ハイトピア3, 4, 5F
作品展(9:00-16:30) 崇廣堂
16(水) バスツァー(MIHO Museumなど) 伊賀市・甲賀市
作品展(9:00-16:30) 崇廣堂
17(木) 基調講演、ワークショップ、バザー(17:15-19:15) ハイトピア3, 4, 5F
作品展(9:00-16:30) 崇廣堂
18(金) 基調講演、ワークショップ、特別講演(聴講自由) ハイトピア3, 4, 5F
作品展(9:00-16:30) 崇廣堂
解散ワインパーティ(18時-20時) ハイトピア5F
天神祭 宵山 市内
19(土) 天神祭 足揃えの儀 市内 任意参加
20(日) 天神祭 本祭 市内

■プログラムの概要
(1) 基調講演
 著名な4人の作家・研究者による45分の早朝の講演で、特に組紐に限定されず、広くテキスタイル全般の話題を取り上げ、参加者全員が聴講しました。初日に講演したJennie Parry先生は、日本でもよく知られた高台の求道者であり、イギリスのBraid Societyの現会長でもあります。高台という道具によって、テキスタイルの表情にどのような変化を与えられるかを極限まで追求してきた経緯を紹介しました(写真1)。世界的なテキスタイル・デザイナー須藤玲子先生は翌15日に講演し、国内各地伝わる織物の工房との協力関係、未開発の自然素材、テキスタイルのリサイクル技術など、テキスタイルのあらゆる課題への取組みを紹介しました。Susan J. Foulkes先生は織紐の研究家で、17日の講演ではロシアも含む北欧各国に伝わる織紐を訪ねて博物館やお店を巡り、あるものは実際に複製した例を示しました。本学会の多田牧子理事は最終日の講演で、日本の組紐の歴史と文化財の組紐の構造解明と複製について述べ、歴史的な組紐の構造の解明により機械化を実現し、それが組紐複合材料に応用可能なことを示しました。

(2) ワークショップ
 著名な作家・研究者29人による実技講座で、一日(10時~16時)で終了するクラスが16、2日間のクラスが17で、各クラスは6~20人が受講しました。台風19号のため到着が遅れ、会議の前半を欠席したJean Leader先生(ループ組紐1日クラス)の代理を多田真純さんが、参加辞退となったGil Dye先生(ボビンレース2日クラス)とKim Davis先生(ボビンレース2日クラス)の代理を、何と合計4日間も稲垣礼子さんが担当しました。欠席の先生方からはハンドアウト(クラスで配布される予定のプリント)がメールで送られてはいましたが、突然に代理の先生を務めることは並大抵のことではありません。
 日本行きの便の運行中止を現地の空港で知らされたAdrienne Gaskell先生(ビーズ組紐2日クラス)とGiovanna Imperia先生(ワイヤ組紐2日クラス)も14日深夜に北京回りで到着し、翌15日にワークショップの初日分を、16日の夜に補講で2日目分を強行していました。参加辞退のCarol Wang先生(結び1日クラス)とAdrienne/Giovannaクラスの各受講者は、初日の14日に関してはワークショップ難民となりましたが、多田牧子理事が3階のカフェテリアを利用して開催したオクト・プレートの臨時講座に参加できました。

(3) 作品展示
 「世界の組紐展」と題して個人93名、(日本人54名、外国人39名)の作品を展示するほか、招待枠として亀井三枝子氏、柿元久美子氏、相原日出子氏の作品、伊賀の組紐工房(4工房)など5グループの作品や研究成果も参考展示しました(写真2)。展示会場の旧崇廣堂は主会場のハイトピアから徒歩8分のところで便利も良く、広く伊賀市民に無料公開されました。新聞3社の地域版はそれぞれ初日の取材結果を報道し、NHK名古屋と地元CATVでも放映されました。残念ながら、会場に学会側の受付と説明担当者が常駐できず、来場者からの評価を記録や、図録の提供などができなかったのが悔やまれます。この様な低セキュリティの展示会場でしたが、展示物の紛失は1件もありませんでした。

(4) 放課後のプログラム
 バザールでは月曜日と木曜日の17時15分から2時間、ハイトピア3階のカフェテリアを会場として、参加者の作品や関連各社の製品の即売を行いました。昇苑くみひもさんと荒川商店さんも出品され、売上げの一部を学会にお納め頂きました。イブニング・トークと称する、カジュアルな雰囲気の講演会 (Joy Boutrup, Katia Johansen, Ruth McGregor)は、火曜日と金曜日の17時15分から45分間、3階で行われました。主催者は、活発な質疑応答を期待してワインを提供しましたが、むしろ飲んでいない人の方が発言が多かったようです。

(5) 見学ツァー
 バスツァーは講演やワークショップの休講日を利用し、全員が伊賀周辺の高原で英気を養いました。約160名の参加者は4台の大型バスに分乗し、好天に恵まれたメナード青山リゾートのハーブ苑の見学と昼食の後に、甲賀市のMIHO MUSEUMを見学しました。参加者数が多いので、昼食をとる場所が限定され、バス2台のグループ各々が逆回りをして昼食時の混雑を回避しました。ハーブ苑ではスタッフの皆さんが出迎えて下さったのは印象的でした。MIHO MUSEUMは我々の見学の5ヵ月前に亡くなったアメリカの高名な建築家I. M. Pei氏の設計によるものです。門から本館までのアプローチは、本来は土木工事でしかないトンネルや吊橋が、建築家によってデザインされた美しいものでした。 またワークショップ終了後の時間を利用して、伊賀の組紐工房や工場3箇所を見学しました。どの場所も主会場のハイトピアから徒歩で行けるため、多くの参加者があり、プロの技術に感銘をうけていました。

(6) 公式刊行物  基調講演とイブニング・トークの講演者、ワークショップの講師の皆さんの寄稿による、論文集「Advances in Kumihimo and Fiber Arts」(英語:160頁)と、作品展参加者が提出した作品写真と解説による「世界の組紐展図録」(和英共用:80頁)が会期中に参加者に配布されました。図録は、写真が主体で日本語の説明もあるため、伊賀の皆様にBraids 2019を知って頂く格好の予告ツールと位置づけ、9月中旬から伊賀の各方面に献本を開始しました。このため残部はあまりありません。一方、論文集の方はアカデミックな内容でしかも英語だけの厚い本であり、国内で捌くのは難しそうです。会議終了後に、お世話になった方に献本した後、次回のBraids 2022を主催するデンマークのKatia Johansenさんに50部を寄贈しました。このSAL便の送料は、会議最終日の送迎パーティ席上で参加者の皆様から頂いた現金を充当させて頂きました。

■開催準備など
以下は組紐国際会議の準備に関する重要な情報ですが、ニュースレターなどでは省いたものです。Q&A形式になっていますが、実際にご質問を頂いたわけではありません。今後の参考になれば幸いと考えます。

1. ワークショップの講師はどの様に決めるのか?
ワークショップの講師となることは、今回の組紐国際会議に限っても様々な利点があります。参加費の減額、生徒として他のクラスを希望する際のポイントの割増、クラスの生徒数に応じた謝金、作品展示と図録におけるスペースの増加などです。またその分野の専門家として認知され、実績を積むことになります。このため開催2年程前から講師を公募して、多くの方に機会を提供すると共に、応募資料にもとづいて選考委員会が審査をしています。選考委員は過去に組紐国際会議の運営をリードした経験のある数名に、今回の主催者のリーダー1名を加えて構成されます。

2. ワークショップの講師の謝金はどの様に決めるのか?
初回の組紐国際会議(京都)ではワークショップ講師の謝金を一律1万円としました。「講師になるだけでも名誉なこと」「教えることは学ぶこと」という日本的な考えが根底にあります。その後、ご存じの通り第2回と3回が英国のBraid Societyの主催でマンチェスターとタコマで開催されましたが、事情が異なるため初回の運営方針は継承されませんでした。Braid Societyは組紐・組物に限定せず、細い紐状のものを作成するテクニック全般を対象にしており、そのクラスを教える先生方は職業的な講師なので、ワークショップの謝金は十分に支払って頂きたいとの希望も聞かされていました。そこで第4回の日本開催を打診された時点で、Braid SocietyにはBraids 2019の運営には口を出さないことを条件にして頂く一方、組紐以外の紐のワークショップも含めることやその講師の謝金についても希望を聞き入れることにしました。謝金の計算は、そのクラスの生徒1名1日あたり3000円としています。

3. 参加費はどの様に決めるのか?
日本で開催される国際イベントは、オリンピックを筆頭とする運動競技の国際試合や製品展示会(見本市・博覧会)の様な大規模なものから、学会や大学が主催する学術的な国際会議などの小規模なものまで様々です。どの規模のイベントでも専門の会社に運営を一任することは可能ですが、予算規模の小さいな学会では参加費の増額に繋がります。
最初の組紐国際会議は12年前に京都工芸繊維大学の主催で開催され、この時の参加費(旅費・宿泊費を除く)は当時の相場が6~8万円のところ3万円(5日間参加)でした。初回ということもあって、参加し易さを優先したためです。この参加費でも何とか実施できたのは、運営が手弁当、会場借料が不要、ワークショップ講師の謝金が一律1万円、さらに外部資金110万円の獲得などがあったからでした。ところが、Braids 2019は会場借料が必要、ワークショップ講師の謝金は増額など、より厳しい条件の中でさえ、無謀にも参加費3万円(5日間参加)を据え置いたので、外部資金獲得に頑張ることになりました。

4. 希望するワークショップ・クラスはどの様に決めるのか?
ネットを利用した「早い者勝ち」方式は、そもそも誰が一番早く申し込めたかの証拠を示すのが難しく、恣意的に配分が行われたのではないかとの疑念を払拭することができません。「早い者勝ち」は人気店に行列を作る様な場合しか有効ではないのです。
Braids 2019では、前半14-15日と後半17-18日の各半期について、自分が希望するワークショップクラスを各4つ選び、この4クラスに希望の程度に応じて200点を割振って頂きました(ワークショップの先生は250点)。一つのクラスに最低でも10点を入れて頂くので、最高で170点を本命のクラスに入れることができます。頂いた希望クラスの記号、配点、お名前のデータはリレーショナル・データベースに格納し、ソートされた複数の画面を見ながら決定しました。その結果決められたクラス分けに対する苦情は全くありませんでした。これは各自希望のクラスを受講できたこともありますが、参加者が希望する4クラスを選びながら、ランク付けを自ら行っていたことが、結果に対し納得ができた理由だと思います。

5. スタッフはどの様に決めるのか?
国内開催の国際会議では、大学院生がスタッフとして働くことが半ば慣例となっています。組紐・組物学会員で同時に工繊大の社会人大学院生となっている5名のうち、吉田有夫子さん、高木たまきさん、菊池摩耶子さんはそれぞれパーティ、作品展示会、受付を担当しました。一方、当初ビデオ撮影と編集、ホテル対応をお願いした多田真純さん、木村章子さんは、博士論文提出間際のため早々に任を解かれましたが、会期中は各現場で頑張りました。見学バスツァーでは1台に2名のスタッフが必要なので、北原文代さんにも添乗をお願いしました。吉波京子さんは恐らく学会員の中では唯一の通訳なので、勝手ながら格安料金でお願いしました。吉波さんは海外からの参加者から多種多様な相談を持ちかけられ、時間的にはその対応の方が多かったのではないでしょうか。なお会計の猪田先生と、2つのパーティでお酒類を完全掌握していた島袋晴海さん、宗像理恵さん、神山明子さん、ひたすら組台をセットアップした学会認定講師の先生方と新谷美佐子さんは、上記のスタッフと共に、自前で参加費や宿泊費を支払って参加して頂いています。また最も大変な時に現れて、スマートにお手伝い頂いた仲井先生と大谷先生(13-14日の受付)、男性スタッフがほとんどいない中、力仕事をお手伝い頂いた魚住理事、同伴者ツァーのバスに添乗して頂いた能宗良幸さんにはこの場を借りて感謝申し上げます。その一方、上記のスタッフを補助する、学部学生に相当するアルバイトを手配できなかったのは悔やまれます。